4つの就労ビザのメリットとデメリット
グリーンフィールドでは一般的に、Eビザ、Blanket Lビザ、Lビザ、H-1Bビザの順番で就労ビザを検討すべきと考えています。そのため以下は、Eビザ中心にその他のビザとの比較となっていますのでご了承ください。
Eビザのメリット
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Eビザは移民局へのペティション申請がないため、コスト面で大きなメリットがあります。(コストの違いはこちら。)
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L-1Bはその会社固有の深い知識が求められ、業務歴が長くても職種によってはビザ申請が困難なことがあります。一方Eビザのスタッフに求められるのはスキルであるため、ある程度の業務歴があれば通常職種に関わらず申請が可能です。またTDY(short-term need)を用いれば、ハードルを更に下げることができます。
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移民局へのペティション申請が必要ないため、申請準備に要する時間が短くなります。(企業登録を含むE新規申請を除く)
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通常、有効期間5年で発給されます。滞在期限は入国の都度2年付与されます。またEビザ企業の条件さえ満たしていれば何度でもビザを更新できます。
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米国での業務をこなせるスキルや経験があれば、日本の親会社での勤続年数は問われません。
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Lビザのように関係会社(または支店)が日本になくてもかまいません。またH-1Bとは異なりビジネスオーナーも申請することが可能です。日本に会社を作らずアメリカで自らビジネスを立ち上げるような場合は、Eビザを利用することになります。
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H-1Bビザのような年間発給枠の制限がありません。
Eビザのデメリット
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親会社・オーナーと申請者の国籍、親会社、派遣先企業の資本比率や日米間の貿易額、アメリカへの投資額といったEビザカンパニー特有の基準を満たすことが求められ、Lビザ、H-1Bビザよりも制約があります。Eビザ企業は永久的に認められるものではありません。E-1、E-2ともに日本の資本比率が50%未満になる、E-1で日米間の貿易比率が全体貿易率の50%未満になると、Eビザ企業ではなくなります。E-2はビジネスが拡大されず、ローカススタッフの雇用が数年経っても見込めない場合、Eビザの資格を喪失する可能性があります。
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Eビザ企業登録を含む新規申請に関していえば、LビザやH-1Bビザよりも申請から取得まで時間がかかることがあります。
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5年以上Eビザの申請がない、またはEビザを保有する社員が現地法人にいない場合は、Eビザ企業登録が抹消されている可能性があります。特に駐在員が少なくEビザを継続して申請できない会社はEビザカンパニー登録を維持することが難しいことがあります。登録が抹消された場合は申請の度にEビザの新規申請をしなければなりません。
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原則、ビザ面に記載された現地法人でしか働くことができません。
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入国時にもらえる滞在許可が2年間なため、2年以上継続してアメリカに滞在する場合は移民局に対し滞在許可の延長申請が必要となります。それ以外の方法としては、アメリカ国外に出国し、再入国をすることにより新たに2年間の滞在許可が与えられます。ただしカナダ、メキシコ、カリブ海諸国では滞在許可が延長されないこともあります。
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滞在期限とビザの有効期限が異なることが多いため、不法滞在にならないよう注意が必要です。
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ビザは世界中どこの米国在外公館でもできることになっていますが、Eビザは対応していない国も多く、日本で手続きをする必要があります。カナダ、メキシコでの申請は、面接枠が限られ限定的な対応となっています 。
Lビザのメリット
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派遣先企業の資本の条件に”日本の”という項目が含まれません。そのため企業の国籍にかかわらず申請が可能です。また日本法人がアメリカ企業の子会社である場合など、日米の親子関係がどちらでもかまいません。
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Eビザカンパニーのように日米間の貿易・アメリカでの投資額が条件に含まれません。
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会社の成長が見込める事業計画があればまずは有効期間が1年間ですが、現地法人が設立直後でも比較的容易にビザ申請ができます。
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ビザ取得直後の入国時に与えられる滞在期間は3年間、もしくはI-797に記載されている期間です。
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日本以外の在外公館でも申請できます。
Blanket Lビザのメリット
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Lビザのメリットに加えBlanket Lビザはペティション申請の必要がないため、Eビザと同じくらいの時間とコストでビザ申請をすることが可能です。
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I-797のBlanketリストに登録されている企業、またはその支店であれば、ビザを切り替えることなく異動し、就労することができます。ただし業務内容が大きく変わる場合は移民局への修正申請が必要です。
Lビザのデメリット
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Lビザ(Blanket Lビザを除く)の申請には必ず移民局へのペティション申請が必要となるため、Eビザに比べコストと時間がかかります。
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新しく会社を設立した場合、1年間の就労許可が与えられます。1年後に実際にビジネスが成長したかどうか移民局で厳しくチェックを受けます。成長が認められなかった場合、延長申請は却下され、申請者は滞在のステータスを失うことになります。
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L-1Aはビザの有効期限は5年ですが、I-797は初回3年(会社が設立1年以内の場合は1年)、更新で2年で実質的な就労期限は限定されます。また更新してもL-1Aは累積7年、L-1Bは累積5年働いた後は1年間アメリカを離れる必要があります。
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会社固有の知識を求められるため、直近3年間の内1年以上、米国以外の関連会社または支店に勤務していることが求められます。中途採用者は転職直後にLビザを使うことはできません。
Blanket Lビザのデメリット
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Lビザのデメリットに加え、関連会社の数や従業員数など、Blanketの資格を満たすのは規模の大きい企業に限られます。
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ビザの有効期限は5年で発給されるものの、I-797(Blanket Lビザの場合はI-129S)を延長しなければ5年間入国できるわけではありません。L-1Aは7年、L-1Bは5年までしか延長できません。その期間が満了しさらにLビザを取得する場合は、1年以上アメリカ国外に滞在しなければ再申請することができません。
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specialized knowledge professional(技術者、研究者などが有する、その会社で数名しか知らないような、その会社固有の深い知識や高度な専門性)を求められるため、営業、バックオフィスの業務はLビザでは認められてもBlanket L-1Bは許可されない可能性があります。工場のベテランオペレーターも高度な専門性がないと判断されると、許可されません。
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Lビザと同様、直近3年間の内1年以上、米国以外の関連会社または支店に勤務していることが求められます。中途採用者は転職直後にLビザを使うことはできません。
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Petitionerが設立から1年経つまで使うことができません。
H-1Bビザのメリット
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日本の親会社と赴任先の企業の間Lビザのような資本に関する制限がないため、資本関係のないアメリカの提携先での就労も可能です。
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大卒以上で大学での専攻と現地法人での業務内容に関連性があれば、Eビザ、Lビザのように業務歴は問われません。大学卒業直後でも取得できます。また大学の専攻と業務内容がマッチしていなくても、3,4年の実務経験があれば取得可能です。その場合の業務経験もEビザのessential skill、Blanket Lビザのspecialized knowledge professional、Lビザのspecialized knowledgeに比べ、申請条件は最も低いといえます。
H-1Bビザのデメリット
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1年間に発行されるH-1Bビザの数に上限があります。通年3月に抽選登録期間が設定され、申込数が発給枠を超えた場合、抽選になります。当選すると移民局にペティション申請をします。
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ペティション申請が通っても、就労開始はその年の10月1日を待たなければなりません。
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労働局への労働条件申請、米国の高等教育機関から得た学位以外は、査定会社による学歴の査定が必要であり、Lビザ以上にコストと時間がかかります。
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雇用主側としては労働条件申請の条件として、同等の経験や素質・技能を持っているその他の従業員よりも高い給与を支払わなければなりません。
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ビザの有効期間は初回3年、更新は1回のみで通算の滞在期間は6年間です。累積6年後は、1年以上米国を離れないと、H-1Bを再申請することはできません。
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H-1Bの転職のしやすさは申請者にとってはメリットですが、雇用する側にとってはデメリットといえます。
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Eビザのessential skill、Blanket Lビザのspecialized knowledge professional、Lビザのspecialized knowledgeに比べ申請条件は最も低いといえますが、他方で高等教育のウェイトが高いため、高卒の場合は実務経験が長くても審査が厳しいという傾向があります。